本年度は、ライフスタイルとしての文化的活動に注目し、文化的活動に表出される女性の社会的地位(学歴、所得、職業的地位の影響)について1995年SSM調査データを用いて検討した。今年度の分析結果は、以下の3点に要約される。 (1)文化的活動の中から音楽・美術・読書に関する活動を中心とした「正統的文化活動」因子とカラオケ・スキー・週刊誌を中心とした「大衆的文化活動」因子を抽出した。分析では、夫の地位を統制することが必要なため、有配偶者にサンプルを限定した。はじめに夫の社会的地位を中心とした地位尺度(学歴形成的地位[学歴・企業規模・職業威信])と経済的地位[世帯収入・夫収入・職業威信])を構成し、その効果を統制した上で、妻独自の社会的地位(学歴・職業威信・収入)がどのような効果を持つかを検討した。 (2)女性の大衆文化的活動に関しては、女性の地位変数を投入すると、夫の地位変数はさらに付加的な効果はほとんど持たない。女性の地位の中では、特に本人の収入が活動促進的効果を持つ。また正統的文化活動には、これまで明らかにされているように本人の学歴の影響が強い。ただし女性自身の地位を統制しても、夫の地位はいずれもが一定の効果を持つことが明らかになった。つまり妻の正統的文化活動は、夫婦の(世帯的)地位の上に成り立つことになる。 (3)さらに男性の活動についても分析したが、大衆文化的活動において妻の収入が負の効果を持つことが明らかになり、夫の活動を妻の地位がコントロールすることが明らかになった。 以上の結果は、女性の正統的文化活動を促進する夫の学歴形成的・経済的地位、夫の大衆文化的活動を抑制する妻の経済的地位(収入)という非対称の関係がみられたことになる。世帯単位の地位構造(階層的地位)が夫婦の勢カ関係や相互作用関係を媒介にしながら夫や妻のライフスタイルを形成する側面が明らかになった。
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