近年女性をめぐる社会状況は大きく変わってきている。日本でも男女雇用機会均等法の成立・施行を契機に女性を囲む社会環境は変化した。また女性の就業に関するデータをみても小さいながらも現在でも変化は持続している。70年代以降、フェミニズムは様々な学問分野で性差別を中心とした問題に対して新しい視座を提供した。社会学の領域でもこうした流れは存在するが、女性に対する計量的なアプローチはまだ多いとはいえないのが現状である。本研究は、こうした隙間を埋めることも意図して、階層的な視点から女性の社会的地位への計量的なアプローチを試みたものである。本研究で得られた主な知見は以下の通りである。 (1)1970年代以降に行われた世論調査の結果を用いて、高度成長期以降にみられた性別役割分業意識の変化と、女性の就業率上昇との関係を考察した結果、女性の性別役割分業意識は、単に量的な変容(「伝統的」意識の弱化)を遂げただけでなく、「規範的」意識から「許容する」意識へと質的にも変容していた。 (2)さらに戦後の教育拡大の中で生じた出身階層・性差・教育達成間の関連の変化を検討した。その結果、男女間の教育達成をめぐる競合関係が、様々な学校教育水準における「ジェンダー・トラック」(高校での家政科・商業科、高等教育での短期大学)の出現によって回避させられてきたことが明らかになった。 (3)さらに夫(あるいは妻)のライフスタイルの規定要因として、夫婦の地位の影響を検討することを通して、女性にとっての社会的地位の意味を考察した。この結果、妻の文化活動を通じて示されるライフスタイルが階層的地位の地位表示的な側面を持つことや、妻の経済的地位が夫婦間の勢力関係を通じて夫の活動を抑制していくメカニズムの存在することが示唆された。
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