この研究は3年計画で実施するものであり、その主たる目的は最近急速に数を増している地方議員が地域社会においてどのような役割を果たしているのか、特に広い意味の「地域福祉」政策の推進に対して彼女たちがどう関連しているのかを、女性議員とのインタビューならびに政資料の分析を通じて明らかにしていこうとするものである。われわれは、1994年と1996年に国の女性地方議員を対象に、二度にわたる実態調査を実施した。その結果、女性議員の多くが候補・当選し、さらに議会で活動するにあたって、その争点として「福祉・教育・環境」さらは「女性の地位向上」などに焦点をしぼっている、特に近年、社会問題となっている高齢者の領域では、議員としてだけでなく、家庭内における一人の妻として、嫁として、子として、この問題解決に日夜奮戦していることがわかった。と言うより、議員になる前に、なんらかの形で高齢者問題に直面し、一市民としてその問題解決にあたった経験から、あるいはその問題に立ち向かうプロセスで、議員への道を選択している事例が数多くあった、しかも福祉だけでなく教育や環境、女性の地位向上などの問題を含めると、その割合はもっと多いのである。それは、議員というものは男性で、しかも開発や建設といった地域利益を守るために地域民の推薦を受けて出てくるとう先入観にとらわれていたわれわれにとっては衝撃的なことであった。しかも、その後も年を追うごとに女性議員が増えつづけ、94年には全地方議員の3%であったものが98年末には5%に達している。そこで、二度にわたって実施した全体に対するアンケートによる調査の結果ふまえ、いわばデータに肉付けすることを目標にし、この3年間、特徴ある地域を選び、議員の生の声を聞くことによって、より緻密な地域社会の実態を明らかにしたいと考え、初年度にあたる今年は鳥取県の女性議員を中心に、北海道ならびに熊本でもインタビュー調査を行うと同時に行政資料の収集にあたった。その結果、われわれの予想はほぼ的中し、地域社会における福祉政策が女性議員の登場で大きく変化、あるいは推進していることがわかった。なおインタビューで得られた生の声は文学化され、最終的に編集されて出版する予定である。
|