平成10年度は、主として熊本水俣病事件についての裁判資料の収集、チッソ関係者の聞き取りをおこない、加害企業であるチッソに関して、以下の諸点の解明をめざした。 1. 加害源となるアセトアルデヒド工程の操業状況 2. 排水口の付け替え、サイクレーターの設置、猫実験の禁止など内部的隠蔽工作と思われる行為の決定過程 3. 反論の作成、研究者への反論の依頼など、外部的隠蔽工作の過程 その結果、今までの刑事裁判などの判決、通説とは異なり、次のような可能性のあることが明らかになった。 1. 猫実験結果の隠蔽、サイクレーターの設置など、一見共通の意思のもとになされたと考えられてきた一連の行動が、異なる部門、個人の意志決定に基づく可能性があること。 2. 有機水銀説が熊本大学によって提起された以降も、有機水銀を含む廃水を流し続けたのは、外部からの圧力が消失したこととともに、通産省が適切な指導・監督を怠ったことにもよるところが大きいこと。 来年度以降は、新たな資料を収集するとともに、チッソ関係者だけでなく、行政の関係者にも聞き取りを試みることによって、チッソの行動過程及び行政などによる制御過程の解明を進めたい。
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