まず、第一に"むら"に在住している老親と他出子との間に成立している修正拡大家族の機能、とりわけ双務的な援助関係(世話・介護、経済的援助、援農など)と精神的扶養関係、そして主として長子や跡取りとしての他出子の役割等について、その詳細を明らかにした。その中から、この家族形態は、不安定で過渡的な性格を内包していること、従って、それは常に消滅の危機にあること、それを拡大家族のメタモルフォーゼとしての、高齢者の「出ぐらし」や他出子の定年帰郷の調査によって、方向と分解起点を確認することができた。 ただ、本研究では、修正拡大家族の機能をの限界を踏まえながら、それをいかに地域福祉システムに生かしていくかという事が焦点であったので、それを補完するものとしての、密度の高い、親族・近隣による高齢者へのインフォーマルな相互支援関係が存在することを前提に、その二つをリンクさせて行くことが可能であり、望ましいという結論に達した。 第二に、こうした、家族、近隣による生活支援、相互援助関係を、さらにまち全体に広げて考えると、そこには、広範な、予的、共同・協同的な、住民の自立的で多様性と独創性に富んだ地域活動グループが存在しており、その自由な活動を、福祉活動に重ね合わせることによって、地域におけるインフォーマルな福祉システムの環としての機能を生み出し、全体を活性化していくきっかけになるとかんがられるということである。 第三は規範意識の問題である。近隣や共同のインフォーマルサポートの場面では、伝統的規範意識が生きているが、それが福祉サービスの利用や、子供の老親扶養義務観などの場合には、新しい、人間の尊厳や人権観などと抵触することも多い、それを、住民の主体的な福祉実践を通して、新たに獲得して行くことが課題と言える。
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