研究概要 |
研究助成1年目は主として、特別養護老人ホームの終末ケアの地域の実態を把握するため、静岡県、青森県の2県を中心に聞き取り調査を実施した。ここでは静岡県の調査実績報告をする。1998(平成10)年4月1日現在、静岡県内の65歳以上の高齢人口は61万2569人で総人口に占める割合は16.1%となっている。市町村別の高齢化率は佐久間町36.0%、竜山村35.2%、春野町32.6%の順になっている。調査時点1997(平成9)年6月現在、静岡県内の特別養護老人ホーム93施設の中から、13施設を個別に訪問し終末ケアに関する実情について聞き取りを行った。今回の調査対象となった施設は、開設10年以上の社会福祉法人立の施設である。その結果、終末にケアについて基本的な考え方として施設側から、次の3つのタイプに分類できる。(1)終末ケアについて積極的に取り組もうとする施設、(2)終末ケアは医療の範囲であり、福祉と医療の連携を強調する施設、(3)終末ケアは医療の範囲であり、臨終が近づいた時、病院でケアを行うべきであるとする施設。調査対象施設で過去1年間の入所者死亡数は、157名で施設内で死亡した者92名、病院に移り死亡した者65名であり,家庭に戻り死亡したケースは無かった。上記死亡者の入所期間は、7年以上21.7%、1年以上2年未満15.9%、2年以上3年未満12.4%の順になっている。死亡時期と季節の関係については7施設が「ある」と答えており、4施設が「ない」と答えている。また、臨終が近づいた時の終末時のケアでは、13施設が園内で行っていた。施設内で死亡した92名のうち、家族が看取ったケースは43.7%となっていた。特養における終末ケアの基本的考え方として、高齢を前提として全身状態が著しく衰弱し、治療方針を立てることが難しく、死を施設で迎える状態を指している。この筆者の調査から、新たな課題として介護保険導入により終末ケア体制・終末ケアのための処遇の変化が出てくることが考えられる。
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