[研究目的]全国の特別養護老人ホーム900施設を対象に施設処遇のなかで終末ケアがどのように行われているか実態調査をした。[結果と考察]終末ケアに対する施設の考え方として、(1)終末ケアについて積極的に取り組む施設、(2)終末ケアは医療の範囲であるとし福祉と医療の連携を強調する施設、(3)終末ケアは医療の範囲であり、臨終が近づいた時、病院でケアを行うべきだとする施設である。施設では、介護主導型の終末ケアと、医療主導型の終末ケアが考えられた。前者は特別養護老人ホームの嘱託医師と連携し施設で介護の延長線上に終末ケアを位置づけ施設で最後を迎える取り組みである。後者の終末ケアは特別養護老人ホームは生活施設であり、終末ケアは医療的ニーズが高く、施設内でのケアは難しく、医療機関で終末を迎えるとする考え方である。本研究から、特養における終末ケアの実態を整理すると、処遇上の課題として「治療をしても治る見込みがあるか、痛み苦しみを除去できるか、出血(上下)が多量にあった場合の対応、受け入れ病院の可能性の有無の判断、嘱託医師の考え、本人の意思、家族の考え」等によりその実施状況は異なる。終末期では、医療ニーズと介護ニーズが介在しており、介護職が医療行為を行っている施設が数多くみられた。特養における終末ケアは、施設内の職種間でコンセンサスが得られていることが重要である。施設全般における介護は、入浴、排泄等の介護の延長線上に終末介護があるとする考えが重要である。今後の課題として、特養が介護保険施設として新たなスタートをするとき、サービスの質の評価項目(終末ケア項目)の検討を行いたい。
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