本研究は、全国の特別養護老人ホーム600箇所を対象に、施設利用者がいつ、どこで、どのように終末を迎えているか、さらに、施設寮母の終末時における介護状況を調査した。調査回答158施設について分析を行った。調査対象期間:平成11年4月から平成12年3月の1年間である。本研究より以下の点が明らかになった。 (1)年齢別死亡者では年齢が上がるにつれ死亡者が増えている傾向にある。 (2)死亡までの施設入所期間では、3年以内死亡が5割である。 (3)死亡場所では、施設内死亡36.7%、病院死亡63.1%である。 (4)死亡時のADLでは54.1%が重度痴呆状況、79.8%寝たきりの状況である。 (5)死亡前の立ち会いでは、家族の立ち会いは8.9%にとどまり、施設職員47.8%である。 以上のことから特養の終末ケアの実態では、入所後3年以内の死亡者は5割以上であり、死亡場所では自宅に戻り亡くなるケースはほとんど見られず、施設そのものが終末の場となっている現実が再確認された。さらに、死亡前3か月ではADLが低下し、ほとんど寝たきりの状態を得て死を迎えている。寮母の「終末ケア業務」では、医療行為が含まれており、業務多忙に加え「生活介護」と「医療行為」の両者を担っていることが明らかになった。施設における終末ケアの実態は、その施設が置かれている地理的条件等においてかなり異なり、その終末ケアの取り組みは地域差がみられた。
|