研究概要 |
1,論考「栄典制度の政治的機能:サッチャー政権の栄典運用を手がかりに」をまとめた。要旨は次の通りである。 政権にある者は栄典制度を自らの利益のために利用しがちである。栄典は、ある場合には、政治資金の提供と引換に与えられ、別の場合には、自らへの支持に対する報償として授与される。また支持を拡大とするためにもそれは利用される。栄典制度のこのような特質は、イギリス1980年代のサッチャー政権のような強権的な政府には一層適合的である。イギリスでも企業は政権党である保守党に多くの献金を行ってきたが、それらの企業の経営者・重役の多くにサッチャーは栄典を与えたおり、資金と栄典のつながりをよく示している。また、サッチャーは自身を支持する議員には厚く栄典を与え、支持しない議員との間に待遇上の差別を行っている。 2,J.Walker著、"The Queen Has Been Pleased:The British Honour System at Work"(1986,Secker & Warburg)について、その内容を分析した。その結果、以下のことが知られた。20世紀初期に首相を務めたLloyd Georgeは、政治資金を調達するために爵位や勲位を大量にばらまいた(3章)。彼はまた、自身への支持を宣伝させるため、新聞の経営者たちに爵位や勲位を与えた(4章)。労働党員と労働組合員は本来は栄典と無縁のように思われるが、実際には、労働党政権の時代にかなりの栄典を受けている(5章)。1960年代から70年代のWilson首相は、労働党員だったが、大量に栄典を授与した。特にマスメディアにおける多くの著名人に勲章を与えた。(6章)。
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