研究概要 |
政権にある者は栄典制度を自らの利益のために利用する傾向がある。栄典は、ある場合には、政治資金の提供と引換に与えられ、別の場合には、自らへの支持に対する報償として授与される。栄典制度のこのような特質は、イギリス1980年代の強権的なサッチャー政権において顕著である。 J.Walker著、"The Queen Has Been Pleased:The British Honour System at Work"(1986,Secker & Warburg)について、その内容を分析した。その結果、以下のことが知られた。20世紀初期に首相を務めたLloyd Georgeは、政治資金を調達するために爵位や勲位を大量にばらまいた(3章)。彼はまた、自身への支持を宣伝させるため、新聞の経営者たちに爵位や勲位を与えた(4章)。労働党員と労働組合員は本来は栄典と無縁のように思われるが、実際には、労働党政権の時代にかなりの栄典を受けている(5章)。1960年代から70年代のWilson首相は、労働党員だったが、大量に栄典を授与した。特にマスメディアにおける多くの著名人に勲章を与えた(6章)。 Sir Ivan De la Bereの著書"The Queen's Orders of Chivalry"(1961年、William Kimber)に検討を加えた結果、今まで日本では正確に知られていなかったナイトについて、いくつかの点を明らかにすることができた。 さらに、マスメディアが栄典にまつわる事柄をどのように報道しているのかを知るために、TimesとBBC Newsの記事を検討した。1998年1月1日の新年栄典リストに関する記事を利用して、栄典を受けた著名人から世間的には無名の人達までの、簡単な経歴と、受章者の声を紹介した。
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