前年度は、幼稚園児の友達関係の時代による変遷について検討した。今年度は小学校児童に焦点を当て、小学生の言動に対する教師の印象を質問紙法により調査することから、児童の対人関係の変化を検討した。また、教諭と養護教諭との印象の違いの分析から、学校における後者の役割についても検討した。peer relationに関する最近の研究、DSM-IVの行為障害やうつ性障害の項目等を参考に、40項目からなる質問紙を作成し、小学校教諭・養護教諭を対象に、各項目が示す児童の行動が、印象として最近「減った」、「変わらない」あるいは「増えた」のいずれであるかを査定してもらった。仙台市および宮城県柴田郡の小学校から任意に選んだ22校(仙台市14校、柴田郡8校)の教諭・養護教諭、および上記14校以外の仙台市立小学校に所属する養護教諭に質問紙を配布し、得られた512通の回答を基に分析を行った(回収率:80.9%)。その結果、40項目中、「減った」あるいは「増えた」の比率が「変わらない」のそれを超えた項目は11項目(28.0%)であった。それらは、"自分の思いを表現するのが苦手"(47.7%)、"友達に攻撃的な言動"(65.4%)、"学業に集中できぬ"(63.2%)、"かんしゃくを起こす"(61.9%)、"その場にふさわしい行動がとれぬ"(65.5%)、"できそうなことも自分からしない"(61.7%)、"友達の中に入れない"(54.0%)"頭痛や腹痛を訴える"(66.6%)、"いらいらする"(63.9%)、"自分の失敗を人のせいにする"(56.6%)、"リーダーシップがとれる"([減った]が48.5%)であった。また、教諭群と養護教諭群の比較では、40項目中23項目(57.5%)で両者の査定に差が認められた(χ二乗検定)。今回の調査の結果から、児童の対人関係の問題は、児童におけるうつ性障害や対教師関係という側面からも考える必要のあることが示唆された。
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