小学校児童の対人ストレスと学校適応に関する研究の一環として、前年度我々は、最近の児童の言動に対する小学校教師の印象を、仙台市およびその近郊の小学校に勤務する教諭および養護教諭を対象に、40項目からなる質問紙を用いて調査した。その結果、対人関係や学校適応に問題をもつ児童が、最近増えているとの印象をもつ教師が多いことが明らかになった。とくに養護教諭は、内在化する不適応行動の増加を敏感に感じていることが推察され、今後この問題への関わりが、養護教諭に期待される重要な役割の一つと考えられた。そこで今年度は、調査対象を養護教諭にしぼり、保健室を訪れる児童には最近どのようなタイプの子が多いか、また、養護教諭はどのようなタイプの児童への対応が難しいと考えているかを明らかにし、併せて児童の不適応行動に対する対応について考察することを目的に、新たな調査を行った。調査対象は、仙台市立小学校に所属する養護教諭125名である。質問紙は養護教諭の会を介して配布され、得られた90通の回答を基に分析を行った(回収率:72.0%)。被験者は、1)保健室を訪れる児童の特性について、最近増加していると考えるタイプを、質問紙に例示されている中から順位をつけて3つ選ぶこと、2)同様に、対応が難しいと考えるタイプを順位をつけて3つ選ぶこと、そして3)これらの児童に関する意見の開陳が求められた。その結果、多くの養護教諭が家庭の教育力の低下や基本的生活習慣の躾ができていないことを指摘し、それらを原因とした基本的な生活習慣が乱れや体の不調が生じると考えている、ことなどが明らかになった。また、これらの問題は複雑に絡み合って対応が難しく、養護教諭も多忙で対応しきれない状態がうかがわれた。今回の調査から、家庭へ働きかける有効な手段や家庭教育プログラムの開発が、今後の重要な課題であることが示唆された。
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