研究概要 |
本年度(研究初年度)は,研究対象校である茨城県立八千代高等学校について,主として,1)総合学科設置に至る経緯と背景,2)総合学科第1期生の総合学科に対する意識を明らかにすることを目的に研究を行なった。その概要と成果は以下の通りである。 1) 総合学科設置の経緯と背景に関して 県の高校教育改革の動向に関する資料および対象校の教員に対する聴き取り調査より,当該総合学科が,(1)県の高等学校審議会等,県レベルでの設置の検討に先立ち,当該校において計画されていたものであること,(2)その際,それまでの「総合選択制」の限界を克服することが大きな課題になっていたこと,(3)その限界は「コース」という強い「枠づけ」を前提に生徒を組織化せざるを得ない点にあったこと,具体的には「コース」制に起因する「コース」間の生徒数のアンバランスが学校経営・教育実践上の障害になっていたこと,(4)従って,総合学科に求められたのは生徒を組織化する上での「枠づけ」の緩和(コースレベルの選択から科目レベルでの選択への移行)であったことを明らかにした。 2) 総合学科第1期生の総合学科に対する意識に関して 第1期生に対して実施した質問紙調査より,「枠づけ」を緩和した学校のなかで,(1)生徒の科目選択に対する志向が自身の興味・関心,適性を基軸に形成されつつあること,(2)しかしながら,生徒の志向を学校外の社会と接合させつつ彼らを学習に向けて動機づけようとする学校側の指導と相まって,新たに種々の「資格・検定」が彼らの科目選択の基軸になりつつあること,(3)従って当該学科における生徒の組織化は,表層的には「選択」の形をとりつつも強く「枠づけ」られたものになりつつあること,(4)その点で総合学科のなかに,機能的に構造化されたわが国の高校教育の特徴が見て取れることを明らかにした。
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