本研究は、ワークショップ・ボランティア活動など多様な体験学習における「ファシリテイターの資質」を解明する計画で開始され、主として、継続調査地(「実践教育活動・あぶらむの里」)への参与観察を中心に行われた。「体験学習におけるファシリテイター」には、生きた人間を全体として捉える力量が求められる。それは、身体的・感情的・理性的・精神的など、あらゆる断片を総合的に捉える資質である。ところが、多くの聞き取り調査から、そうした「総合的な視点」を支える資質は、ファシリテイター自身の「内面的・実存的・精神的」関心、すなわち「スピリチュアリティ」と深い関連を持つことが明らかとなった。その結果、研究の焦点が「ファシリテイターの資質としてのスピリチュアリティ」に集中した。他方、体験学習参加者の側にも、精神世界(哲学・宗教)への関心が見られた。<体験学習に参加する動機>と<精神世界に関心を持つ動機>との関連、および、その異質性、そうした関心に含まれる危険性。こうして「体験学習におけるファシリテイターの資質に関する教育人間学的解明」という課題は、「現代日本におけるスピリチュアリティ問題の基礎的解明」という課題と連動する形で、展開することとなった。現代青年を相手にする「ファシリテイター」の資質を「スピリチュアリティ」の支店から検討した本研究は、今日的な課題に応えつつ、問題の本質を明確に描き出したものである。
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