初年度(平成10年度)は、分権改革が進行する下で教育行政の分権改革の動向に自治体がどのように対応しようとしているか等を、都道府県・市町村教育長へのアンケート調査によって掌握した。その結果、中教審答申等が提言する教育行政改革に対して平均的には相半ばする評価であるが、教育委員会の間で無視しえない大きな違いがあることが明らかになった。 2年目(平成11年度)は、(1)「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」の成立に伴う地方自治法と21本の関連教育法令改正の検討を通じて今次分権改革と教育行政改革の基本的性格と課題等を明らかにすることと、(2)前年のアンケート調査で分権改革に積極的に対応している幾つかの自治体を選んでヒヤリング調査に取組み、それら自治体の積極的対応がどのような自治体内部の政策過程から生み出されているかを調査研究した。教育委員会での取組みの違いが首長の教育行政へのスタンスやリーダーシップの違いから生じていること等から、なぜ、従来は首長のそうした教育行政へのリーダーシップが発揮されなかったのか、今次の分権改革は自治体内部の教育政策過程にどのような変容をつくりだしているのか等、戦後教育行政制度と自治体の教育政策過程について再検討を要請する研究課題を浮き彫りにさせた。 そのことから、3年目(平成12年度)と最終年度(平成13年度)の2年間は、自治体の事例研究と並行Lて、戦後日本における教育行財政制度の構造・特質がどのようなものであったのか、その制度の下で自治体の教育政策過程はいかなるものであったのか、今次の分権改革は教育行財政制度の構造やしくみをどのように変え(或いは変えないで)、自治体の教育政策過程にどんな影響を及ぼすことになったのか(或いは及ぼさなかったか)等の研究作業と研究方法の検討に取り組んだ。
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