前年に引き続文部省年報、府県学事統計書に基づき地域別学校別の進学に関する統計データーを収集・整理し、基礎資料として全国的な就学・学歴統計のデーターベース化を実施すると同時に、30-40年代の社会動態、とりわけ小学校新規学卒者動向、労働力(人口)移動、にかかわるの諸資料の収集整理を行い、社会変動のなかで浮上した教育課題を明らかにしようとした。 上記の社会変動のなかで、教育運動ならびに教育研究の近接領域での教育論やそれを支える基礎概念の新たな展開を明らかにする作業を研究会を組織して進めた。すなわち (1)唯物論研究会では、主として戸坂潤の科学論を検討した。戸坂の議論は当時の教育論に根拠を与えた橋田邦彦を意識したものであり、特に1941年の諸論考での展開が極めて重要な意味合いを持った点を明らかにした。 (2)新興教育運動の社会史的検討を行うために諸資料を収集した。同時に聞き取り調査の予備調査を行った。 (3)労働科学研究所の桐原葆見を主たる対象として、心理学研究の新しい動向を押さえ、それが教育科学運動の接点を持っていく点に注目してその質の検討を行った。 (4)さらに木下竹二(奈良女高師附小)、及川平治(明石女子師範附小)さらに浅草尋常小学校の実践を検討し教育認識の新たな展開を小学校現場の実情を踏まえて検討した。 以上、社会変動の実態を押さえながら拠点となる地点を設置し、30-40年代の教育学の変容の現場に即した検討を中心に進めた。本年度はそれらを統合して研究を総括することが課題である。
|