本研究は、1930-40年代に現れた教育学の新しい動向をそれを生み出した社会過程との関係で捉えることで、日本における教育と教育学の関係構造を歴史的に位置づけるための基礎的な研究を実施した。 その際に、社会のあり方に対応した教育の実践を総括する教育の言説の組み立て、理論と実践の関係構造の再構築など新しい動向に対して、教育と社会の関係を子どものあり方を媒介にして調整しようとする営為の現れを捉えようとした。そしてそれを<教育と社会>の学というカテゴリーのもとに捉え、その諸相を押さえようとした。 実際には、新しい教育課題の出現を若年労働市場と教育というカテゴリーで総括しようとした動きに注目した。その社会過程を高等小学校新規学卒者の農村からの流出、都市への流入の実態のなかでマクロとミクロを見据えながら押さえた。また、それを捉える政策的な言説の生成、教育実践の展開、さらに学の形成のそれぞれの場の実際を検討した。さらに科学や労働の領域の議論の展開を踏まえて、この時期の教育学が抱えた課題について考察した。それを通して、当時の日本における政策や在野の教育運動を貫いて人々の生活やフォークペダゴジーと様々な形で切り結びながら展開する必要があったこと、なかでも「教育科学」の主張が<教育と社会>の学に基づき、周辺の諸学問領域の知見と通底しながら、広義の教育実践を総括する枠組みを示していた点を確認した。同時にその過程は、戦時社会の構築のなかに枠づけられ矛盾的な現れをした点を指摘した。
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