本研究は、2つの課題から構成した。 第1は、個別の指導計画作成の現状と課題を検討することである。児童生徒の障害がもっとも重度化、重複化する肢体不自由養護学校において養護・訓練の個別の指導計画作成の実態を調査した。その結果、個別の指導計画は複数教師が関与して討議を経て作成されていること、課題解決にもっとも適した集団サイズを経験的に採用していることを明らかにするとともに、討議にあたって進行役が存在しない、あるいは明確な手続きをもたないなどの課題を指摘できる。さらに、実態調査の知見を踏まえて、個別の指導計画の作成の2形態(複数教師よる集団事態か、個別事態か)を想定して、各形態での指導計画作成者の作成過程の心理的構造を探索し、形態の違いや作成者の属性が心理的構造に及ぼす影響を検討した。その結果、作成過程での心理的構造の解釈にあたって、不安・困難さ―明確性の軸が示唆された。 第2は、個別の指導計画作成に関する理論的検討を行ったことである。個別の指導計画が複数教師の関与によって作成されることに着目し、これを集団事態での課題解決、意思決定とみなして、当該研究の成果を文献レビューし、目的論および方法論に関する理論的枠組みを提起した。とくに、方法論の構築に当たっての留意すべき事項として、偏りのない情報に基づく集団意思を行うこと、独断的な決定を行わないための集団意思決定の在り方を考えること、効果的な意思決定を行うための集団サイズ、授業や教授―学習過程と密接な関連をもたせることを指摘した。
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