平成10年度は、現代アメリカにおける教育改革の動向と特徴を明らかにするため、マグネット・スクール」や「チャーター・スクール」などの1980年代からの学校改革動向の検討を行った。この考察との関連で、ジョン・デューイの「社会的探究」による公共的空間の創造、ネル・ノディングズの「ケアリング理論に基づく学校改革案」、ヘンリー・ジルーの「教室でのアイデンティティ・ポリティクス」論についても検討した。 平成11年度は、「ポストモダンの教育」を中心概念として、アメリカ進歩主義教育期と現代における教育改革や人間形成の課題を検討した。そのさい、ポストモダン時代における教育改革の課題を明らかにするために、「公共的空間」としての学校や教室の意義を考察し、多文化教育が提唱する「ハイブリッド・アイデンティティ」の特徴を追求することによって、教育や人間形成における「越境」理念の意義を検討した。 平成12年度は、アメリカ進歩主義教育期以来の公共的関心の形成についての理論的展開が、モダン・ポストモダン・伝統というパラロジカル(重層言説的)な教育理論や人間形成理論の構築にどのような影響を与えているかを究明した。また、わが国で現在進行している教育改革の背後にある理論的課題を掘り下げることにより、多様な関心・視座・価値の構築に関与できる「公共的想像力」育成のための教授学的方法やその具体化のための課題について検討した。
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