以下の(1)〜(7)の内容で研究をおこない、結果を整理した。 (1)自閉症の最近の研究動向を整理し課題をまとめた。(2)知的障害をもつ自閉症の自己認識の実験研究をおこなった。(3)重度の自閉症の人に対する労働の意味・意義について理論的検討をおこなった。(4)重度の自閉症の人を含む自閉症の人が通う作業所の実態を調査した。(5)重度の自閉症の人を中心に、作業課題を調査し、支援を含め、検討をおこなった。(6)重度の自閉症の人の実態について、日常生活・作業能力・問題行動と職員の要望等をまとめた。(7)生活の質について、家族へのアンケートを中心に検討した。 文献やレポートの整理を通して、重度の障害をもちながらも、最近の「社会性」への自閉症研究の動向と重ねて、「主体性」の確立を重視した支援が求められていること、そのための方法や成果を施設条件が乏しい作業所において積み上げられており、その成果をまとめていくことの重要性を指摘した。また、このような文献等で明らかにした課題を踏まえ、実験や実態調査、作業所等との共同研究をおこない、成果をまとめた。実験については、重度の自閉症の人を理解し、支援を容易にするような評価システムの開発を念頭におき、既製の評価システムの他に、自己意識を明らかにする方法を検討した。この課題については、不十分な点が残り、今後も継続する必要が確認された。重度の自閉症の人に対する作業所等での実践については、多くの課題をかかえながらも、保護者のアンケートからも確実に前進していることが確認され、保護者の多くの方も、労働等の意義を実感されていた。これらの成果を踏まえ、実践の前進を可能にしている条件を検討し、「生活の質」という観点から作業所等での実践のポイントを整理した。
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