1970年代半ば以降、わが国の高年齢層の経済的地位と家族形態がどのように変化してきたのかを、1975年、85年、95年の「社会階層と社会移動」全国調査の分析によって検討した。高年齢の不就業層は、1970年代から1980年代後半まで増加し、現在はその傾向に歯止めがかかっている。大企業・官公庁の雇用者層が不就業にな移行するという傾向が強くなっている。不就業層の経済的地位が近年、著しく向上して、子供世代と同居せず、夫婦2人の家族形態を選択することが可能になっている。生涯学習の担い手となる層が拡大していることが明らかになった。この研究成果は1998年度の日本社会学会で「加齢と社会的地位」という題で発表した。 アメリカ合衆国については、1987・88年に実施された全米家族調査の分析を行っており、また研究計画について専門家からのレビューを受け、既存の統計資料と研究の収集も行った。米国の場合も、50歳代後半からどのような職業層が不就業へと移行するのか、また高年齢の不就業層の経済的地位はどのように変化しているのかを検討した。高年齢の早期退職傾向が1970年代から強まり、現在は停滞している点は日本と同じである。しかしアメリカの場合、ブルーカラー層ほど早期に退職する傾向がある。経済的地位もかなり多様性がある。 アメリカのデータは、1994年に再調査が行なわれているので、ライフコースにおける生涯学習機会の利用について検討する予定。さらに日米比較の視点を明確にするために、現代福祉国家の類型論に基づいて、各国の女性の就業、高齢者の早期退職傾向、生涯学習機会などの既存データを整理している。社会民主主義型のスウェーデン、保守主義型のドイツ、自由主義型のアメリカの特徴を明らかにして、日本の現状を位置づけることを試みている。
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