本研究の目的は、芸道の継承教育におけるノン・バーバルコミュニケーションについての具体的検証にある。すなわち、カンやコツの獲得を主体とした芸能の伝承内容(教授内容)がノン・バーバルな方法・形態によってどの程度正確に伝えられているのか、正確に伝えられているとすればその核心は何なのかを明らかにすることである。「継承教育」(それを構成する口承の教育あるいは口伝による伝達行為を含めて)の実態を探るに残された道は、家元クラスの教授場面の観察・分析かあるいは実際に口承・口伝による継承教育を行なっている分野でのその場面の観察・分析ということになる。 本研究では、前者を研究分担者の畑野裕子が担当し、後者を研究代表者の安部崇慶が担当した。畑野は、自身が舞踊家であり、家元クラスからの「継承教育」の体験者でもある。インタビューを基にした論考にもそれが活かされている。安部は、実際に口承・口伝による継承教育を行なっている数少ない事例である真言密教の「四度加行」を本研究期間中に体験した。いずれにせよ、両論文ともに本研究の眼目である、ノン・バーバルな「継承教育」に関する実証的アプローチを試みようとした点において共通の姿勢をとっている。付記すれば、なかなか公開困難な事例(場合によっては拒否される)をこうして論文にまとめることが出来たのも関係各位(諸事情あって一々のご芳名をあげられないが)のご協力の賜物である。 ○研究成果報告書の作成 以上、3ケ年の研究成果を「研究成果報告書」として平成13年3月に刊行した。
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