重症心身障害児・者のQOLの評価検討を行った結果は以下の通りであった。 1)重症心身障害児の両親へのインタビューより、(1)重症心身障害児・者も自己のQOL(生活の質)について様々な方法で表現している。(2)社会的役割として、重症心身障害児・者も周囲人々に様々な影響を与えていること。(3)障害児・者を育てたことを肯定的にとらえている親は少なくない、などの結果を得た。 2)重症心身障害児に対するQOLの評価用紙を作成し、日常介護に携わっている保護者等に回答を求めた。評価項目は(1)健康(医療や健康)、(2)生活環境(日常生活)、(3)家族、(4)社会的情緒的人間関係、(5)教育や労働(日々の療育活動、労働、学齢時は教育)、(6)レジャー(趣味、楽しみ、レクレーション)、(7)全体的な生活に対する満足度、(8)自己表現や自己選択の度合いの8領域に分けた。その結果、重症心身障害児は、全体としての日常生活に在る程度満足している者が多いが、本人や家族を支援してくれる人は少なく、環境や福祉施策は不充分であり、将来の健康や生活に不安がある者が多いという結果であった。 3)学齢児に関しては、養護学校の生徒の重症化の実態やQOLの視点から見た医療的ケアの重要性などについて、これまでの研究やインタビュー調査をまとめ報告した。重度の障害を持つ生徒にとって医療はQOLの基礎を与えると考えられた。 これらの結果より、重症心身障害児のQOLの構造は、Subjective QOLとObjective QOLに、またObjective QOLはさらにHealth relatedと他の領域に分けられると考えられた。今後は、(1)QOL評価用紙の一般化、(2)QOLの基本である重症心身障害児・者自身の個人的満足度(subjective QOL)の評価などが課題となっている。
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