研究概要 |
1、 本研究は、近世社会の子どもを家族労働の担い手として把握し、近世家族の多様な日常的営為のなかでの子どもの労働の位置づけの考察を通して,近世における子どもの存在状況ならびに子ども像の特質の解明を目指した. 2、 研究を進めるにあたり、まず先行研究を調査し本研究の課題の意義の確認からはじめた。1950年代の初めに小川太郎はその著「日本の子ども」において、これまでの歴史叙述には子ども像の歴史的な変遷への着目が不十分であることを問題としたが、このような情況は近年大きな変容を見せつつある。すなわち社会史研究の盛行と相俟ち、子どもを対象に据えた教育史研究が登場し、子どもへの関心が多様に論じられ始めたのである。 とはいえ、それでもなお本研究の提示する「働く子ども」という視点が見落とされていることが指摘される。伝統社会における子どもの存在状況は、労働との関係において初めてその本質が明らかになるのであり、家業とのかかわりに注目して子どもの労働の諸相の解明を目指す本研究の課題の意義を確認した. 3、 本研究に有効な文献史料として当初想定した史料群は、(1)近世文芸作品、(2)近世の教訓書、教養書、実用書、(3)近世農書の三群である.本年度はこの内の(1)(2)を中心とし、あわせて近世社会の政治・風俗・民衆意識に関する刊行史料を収集した. 4、 次年度は以上の史料の分析と考察を進め、あわせて第3群の近世農書とその関連史料の収集を行う計画である.
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