今年度の研究では、まず第1に、実際に生じたいじめ・不登校問題に対して、それぞれの学校でどんな取り組みをしているのか明らかにした。ここでの中心は、とくに管理職、養護教諭、生徒指導部の位置づけや役割分担、そして教師集団の協力体制の実態について検討した。これについては、すでに平成9年に実施したアンケート調査(福岡県内の小・中学校教師を対象)を再分析した。ここで明らかになったことは、全体のほぼ2割程度の小・中学校では、教師集団の協力体制や連携がほとんど取れていないことである。そして、こうした学校の多くは、担任教師が単独で対応しているということがほとんどであった。 また、第2に、いじめ・不登校問題に対する学校としての取り組みや学校経営に関する実態を明らかにするために、いくつかの学校を対象として校長・教頭、養護教諭、生徒指導担当の教師、そして個々の教師に対するインタビュー調査、およびフィールドワーク的な調査を実施した。いじめ・不登校問題に対して有効な取り組みがされている学校では、ほぼ例外なく教師集団の連携が明確に取れていることに加えて、これを基盤にしてより積極的な対策や指導が実践されていることが明らかになった。その一例として、ある小学校では、教科指導と生徒指導とが融合したかたちの実践が行なわれており、すべての教科指導のなかに積極的に「仲間づくり」の実践が組み込まれている。また、ある中学校では、学校におけるすべての実践に、地域社会との連携が実現されており、地域の人たちが補完的な立場をこえて、教育指導に関与するといった事例もみられた。 来年度は、こうした事例的な調査の結果を「一般化」することに加えて、各学校に対するアンケート調査を通じて、いじめ・不登校問題に対する学校としての取り組みの全体像を検討する予定である。
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