これまで3年間の調査・研究を通じて明らかになった諸点は、つぎのようなものである。まず第1に、ごく最近の子どもたちの「荒れ」状況に関してである。子どもたちの問題状況は、いまやたんにいじめ・不登校だけにとどまるものではなく、さまざまな問題行動と密接に結びついている。そして、いわゆる「荒れた」学級ではいくつかの問題行動が重複的に生じていることも明らかになった。また、子どもたちの「荒れ」は確実に小学校段階にまで広がってきており、内容によっては中学生の発生率をかなりうわまわるものもある。第2に、いじめ・不登校問題をはじめとした子どもたちの非行・問題行動に対して、いまだ担任教師が単独で対応するということがかなり多く、学校全体の問題として教師集団が協力体制をとるといった対応はまだまだ少ない。とくに、全体の2割ほどの小・中学校では、教師集団の協力体制や連携がまったくとれていない状況である。これに加えて、この種の問題解決の方法として、地域や家庭との連携といったことに積極的な教師はかなり少数である。こうした背景には、教師の多忙性や、教師自身が自分のクラスに閉じこもりがちな傾向が強いといった状況がみられる。第3に、子どもたちの非行・問題行動に対して、全校的な取り組みをしている学校では、明らかに一定の成果が出ていることが認められた。なかでも、とくにこれに関する教師集団の協力体制や役割分担が明確化されている学校では、より明らかな成果が上がっている。そして、こうした教師の協力体制や役割分担に関して、校長・教頭といった管理職のリーダーシップ能力が大きなファクターであることも明らかになった。そうした学校では、ほぼ例外なく地域・家庭との連携がとれており、管理職のリーダーシップ→教師集団の協力体制→地域・家庭との連携という図式が明らかに認められる。
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