本研究の目的は、1997年5月に成立したイギリス労働党政府が、新たに打ち出した専門中等学校(テクノロジー・カレッジ、語学カレッジ、スポーツ・カレッジ、芸術カレッジ)を核とし、それらと初等学校や地域ビジネスとの協力、連携をはかる地域学習ネットワーク形成政策をとりあげ、その理念、学習ネットワークの実態、そのタイプなどを分析して、イギリスにおける中等教育段階での地域学習ネットワーク形成策の目的、実施の様態、ネットワーク形成に伴う諸問題を明らかにしようとするものである。 この目的のために本年度は以下の研究を実施した。 第一には、文献資料の収集と分析である。この点については、労働党政府による中等教育における地域学習ネットワーク形成策に関する通達、専門中等学校認可の基準などに関して、インターネットで公開されている教育雇用省の文書等により分析するとともに、関連の文献資料(書籍、論文など)を収集した。さらに、テクノロジー・カレッジ・トラストが発行しているパンフレット類についても収集をはかりつつある。 第二には、地域学習ネットワーク実態調査のための予備調査を、専門中等学校に対して実施した。前年度の研究での調査に対して回答した専門中等学校78校の校長を対象として、学校と地域との連携、協力の面における変化等について郵送による予備調査を実施した。その結果18校(回収率23.3%)の校長等から回答を得た。それによるとほとんどの学校で特に地域の初等学校に対するIT領域におけるサービスの提供を実施している状況が見られた。また、夜間、週末における父母、コミュニティの住民への施設、サービスの提供を行っている学校も存在した。しかし、地域へのサービスの提供について、時間、ロードなどにおいて過重であると考えている校長もおり、労働党政府の政策が現場において必ずしもスムーズに受け入れられているわけではないことも明らかとなった。 現在、これらの結果に基づき来年度の調査のための質問紙を策定中である。
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