本年度は研究のまとめの年度であり、所期の研究目的に沿って以下の点について研究を進めた。 第一には、イギリスの労働党政府が打ち出した、専門中等学校に対する新たな機能の重視について文献資料に基づき、その内容を明らかにした。その機能とは専門中等学校におけるすぐれた教育・学習資源を、地域の他の初等学校及び中等学校などの教育改善に役立てようとするものであり、それはその後、専門中等学校の「コミュニティ次元」と称されることとなった。「コミュニティ次元」は専門中等学校申請の審査においても特に重視されていることを、テクノロジー・カレッジ及び語学カレッジのケースをとりあげ詳述した。第二は、専門中等学校全校(1999年現在)362校を対象にして郵送による質問紙調査を実施した。調査の時期は1999年9月から10月にかけてであった。その結果152校の校長などからの回答を得た。(回収率は41.9%) これらの分析の結果以下の点があきらかとなった。専門中等学校は「コミュニティ次元」の重視という政策の変化に対応して、学校の資源の開放を積極的に図っている実態が明らかにされた。ただ、地域の学校のサービスという点においては、中等学校である専門中等学校による初等学校へのサービス提供については、97.4%の専門中等学校が行っており、またコミュニティの成人、青少年へのサービス提供が84.2%であるのに比べても、中等学校へのサービス提供の割合は61.2%にとどまっていることに示されるように、競争原理において競合してきた中等学校とのパートナーシップの構築はまだそれほど進んでいない状況にあると考えられる。このことは「コミュニティ次元」推進における問題点の中で「中等学校の側の低い参加率」が比較的多くあげられていたことと関連する。このような問題点はみられるものの、労働党政府が意図する「コミュニティ次元」の強化による地域学習ネットワークの構築において専門中等学校各校は積極的に取り組んでおり、労働党政府の政策による地域学習ネットワークの形成は着実に進展しつつあるといえるであろう。 以下の研究成果は刊行予定の研究成果報告書において報告している。
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