本年度が第2年目の研究調査となる。本年度は、まず公民教育に関する資料を入手すると共に、特に1998年8月に官報告示された「1999年タイ国家教育法」を全訳した。本教育法は、国レベルの教育基準を定めた法律としては、タイ教育史上初めてのものである。タイの教育、否タイ国家の将来を占う画期的な法律である。本法のエッセンスは、「グローバルスタンダードなタイ国家の建設」である。世界共同体の中で21世紀を生き抜くタイ人、すなわちタイ公民の育成が強く意識されているのが明らかとなった。 また8月に実施した現地調査では、全国6ヶ所(北部、東北部、中央部、西部、東部、南部の6地域)において、児童生徒と教師に対して公民教育に関する質問紙調査を実施した。各地域とも児童生徒100名6地域計600名、教師100名6地域計600名に対し質問紙調査を実施した。質問紙調査の結果については、現在、集計中であるが、今後集計が終了次第、分析を進め、報告書にまとめる予定である。 さらに、現地において、小学校や地方の教育行政組織を訪問し、関係者にインタビューも行った。その結果、教育の地方分権化が急速に進んでおり、地方において、独自なカリキュラムが策定されていることが明らかとなった。たとえば北部のランパン県では、教師一人一人が個別の指導計画書を作り、創意工夫された授業が展開されていた。そこでは、グローバル化に対応した教育と、地方の文化伝統を保護発展させようとする教育とが、うまくバランスよくカリキュラムに位置づけられていた。「文化伝統を保護発展できる(localism)と同時に、21世紀のグローバル時代を生き抜くタイ人(globalism)」というタイの公民像が明らかになった。
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