平成10度から12年度に亘り行われる予定の本研究初年度では、1920年代のドイツにおける青少年問題の実情と対策、 「第三帝国」期における「非社会的」青少年への「保護」政策という問題を中心に、資料収集、ドイツ人研究家からの研究の現状に関するインタヴュー、また収集した資料の整理という作業が行われた。即ち、 1. ヴァイマル共和国期ドイツにおいて人々は、産業化・経済危機に起因する青少年問題の顕在化に伴い、その保護・育成政策という観点から文化活動の側面において規制を設けようとしていた。当時のドイツにおいて映画に対する規制法案が成立した後に本格的に論じられた、 「低俗・猥褻図書から青少年を保護するための法律」(1926)の成立過程とその適用にともなう諸問題に関する資料・文献の収集と整理を行なった。 2. ヒトラー政権下のドイツにおいては様々な青少年「保護」制度が設けられたが、その中にはユダヤ人に対する強制収容所と同様に、 「保護」という名目的な理由の下に非社会的な青少年を実質上人種的・民族主義的観点で社会から隔離し収容するための施設があった。これらの施設に関してはこれまで、ドイツにおいてもあまり知られてはいなかった。本年度においてはドイツを訪れ、N.Hopster教授(Bielefeld大学)、U.Gerrecht女史(Moringen青少年収容所記念館館長)、M.Guse氏(矯正教育研究家)から、ヒトラー政権下の青少年政策に関する研究の現状と資料収集に関し助言を受けた。
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