・国外機関への情報検索を通して1912/3年度-1948/9年度間のStatistique Scolaireを間欠的ながら10年分入手し、前年度入手したnnuaire Statistique(1896-1956年)と合わせて、エジプト革命前までを統計的に扱いうるだけの資料を収集した。 ・これまで現地研究者も十分に利用しえていないエジプト教育省博物館文書室所蔵の省内報告書を45日間にわたり現地にて閲覧し、1899年-1946年間の最重要報告書の一部を(複写不可故)筆写により入手した。これまで比較的研究がなされているエリート教育制度とは異なり、教育終了証書試験がなく、軽視されてきた革命前民衆教育の実態理解のために統計的資料では判らない実態理解のための資料として、これは非常に重要な資料である。 ・主に統計的資料にも基づき、エリート養成のためのエジプト近代教育の拡大とその社会的影響について、当時「知識人」であるための規準であった中等教育の拡大及び終了証明書所得者の増大を、特にその量的、質的転換期である1930年代を中心に分析した。世界的にも教育の急激な拡大と世界経済恐慌の影響は同時代に広く見られた現象であるが、エジプト固有の現象もあり、これらについて論文として発表した。 ・近代的民衆教育は19世紀末に始まり、世紀の転換期頃から急速な拡大を開始するが、その制度的、量的展開について、入手した資料(前記)をもとに、革命前までの質的、量的分析を現在行っている。これまで政府による近代的民衆教育政策の出発点としての1868年の「ラジャブ法」とその成果についての論文を序説として脱稿し、現在それ以後の制度的展開と実態について分析、論文執筆中である。
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