顕著な高校の事例調査をもとに日米比較を行った。我が国の場合、高校教育の再検討というよりも、高校での十分な学習ができていないままに大学に入学してくる学生のリメディアル教育の仕組みをどう作るかといった議論が中心であり、大学教育と高校教育との接続において、大学進学を準備するために高校を如何に見直すのかといった議論が不足していることが再確認できた。この点、米国では、むしろ大学教育を基準として、高校教育の在り様が議論され、大学への進学を準備する高校教育の見直しが進行している。例えば、カリフォルニア大学では出願する生徒たちに入学基準に見合った科目内容の学習を高校で求めている。それは、"courses to meet requirements for admission to the University of California"と呼ばれ、各高校は、カリフォルニア大学への出願する生徒たちのために、授業内容を詳細に説明した各科目ごとのシラバスをカリフォルニア大学に提出し、科目内容が進学のための準備教育として適しているかどうかの認定を受けることを制度化している。こうした科目は、CP(College Preparatory)科目として高校のカリキュラムに含まれている。この方式をカリフォルニア州立大学も採用している。このように、大学教育を基準としてその有機的接続の具体化が図られている。また、サンフランシスコ州立大学に至っては、"Gear Up"というプロジェクトを起こし、小学生、中学生など大学進学まで時間の猶予のある子どもや親を対照に、大学進学に向けた生活づくり活動を実施しようとしている。ユニバーサル時代とは、誰もが大学教育にアクセスできる時代であり、大学はそうした時代に対応すると同時に、その時代を担うという大学の使命を全うするために、内容そのもののユニバーサル化ではなく、そこへのアクセスのユニバーサル化を可能にする努力が大学と高校の間に作られてきていることが確認できた。
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