ブラジル日系人の人口とその分布はサンパウロ州とパラナ州に集中しているが、それに対応して日本語学校も両州に多くが分布している。学校の規模は100人以下の小さいところや私塾として自宅を用いているようなところが多い。生徒数は1万人台前半にとどまっており、これは1990年代前半から比べて40%もの減少を見ている。 教師は1世がまだ多いが、生徒の中心は3世であり、家庭に日本語の環境はほとんどない。ポルトガル語を解さない教師と日本語を解さない生徒の間での日本語教育は一層困難になりつつある。親が日本語を学ばせる動機は日本の文化を知って欲しい、日本とブラジルの良いところを備えた国際人になって欲しい、などというものであるが、日本文化の「伝承」を重視する教育は、ブラジル社会育ちの子どもたちには適合しないことが多い。 教師は専門的な訓練を積んだ割合は極端に少なく、多くは日本語を話せるというだけで教師となっている。教師の給料は高くなく、最低給料の4倍まで程度であり、地方によっては非常に低い。このため、専門職として日本語教師が成り立つことが出来ず、圧倒的に中年以降の女性の副業的なものとして行われている。教師の研修に関しては、広く行き渡るのは難しい状況にある。日本語学校自体の経営は、日本人会や文化協会など団体の補助があるところでようやく継続している状態であり、経営状態は非常に苦しい。 日本語学校の将来は非常に困難であるが、中には日系人だけでなくブラジル人父母の心も捉えて多くの生徒を抱える学校に変貌したところもある。それらは日本語や日本文化だけを教えるのではなく、ブラジルの義務教育段階私立学校となって日本語コースを設けているもの、就学前の幼児を預かりつつ、英語やコンピューター、日本語を教えるという学校などである。 ブラジルの教育は変化しつつある。ブラジルの教育制度の中で生き残り、日本語を魅力ある外国語とするため、公立学校で教えるという方策の拡大、ブラジル人向け講座の拡大、日本語教育専門家の育成、日本語学校の適応・改革を急ぐべきであろう。
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