本年度は、前年度に引き続き、関連各種文献・資料の所在調査・検索およびデータベース化の作業を進めるとともに、それらの収集および分析に入った。その際、昨年度に引き続き、American Association of University Professors(AAUP)のホームページをはじめとして、急速に整備されつつあるアメリカの大学・図書館の関連サイトをインターネットによって活用しながら作業を遂行している。また昨年度までは、検索・収集。分析の範囲については、AAUP関係資料および事例としてのシカゴ大学関係資料を中心としていたが、アメリカ大学・高等教育史における「テニュア」制度の確立をAAUPの影響を中心に解釈する、という先行研究の限界を克服するためにも、今年度は、アメリカの教育情報データベースERIC(The Educational Resources Information Center)およびThe Dissertation Abstracts Database(UMI)にも範囲をひろげて作業を進めている。 その結果、従来構築していた本研究の分析枠組み(作業仮説)に加えて、「教育」(特に学士過程教育)と「研究」(大学院教育を含む)との機能分化の影響、という昨年度得られた知見(仮説)についてもその論証の見通しを得た。さらにこれに関して、とりわけ「一般教育」の中等教育との接続関係がアメリカ教育史において問題になるなかで、高等学校やコミュニティ(ジュニア)カレッジの教員のテニュア制度との関連も視野に入れなければならないことが明らかになった。この他、教員の教育上・研究上の生産性を中心とする教員評価・大学評価の問題や、それに伴う大学の説明責任(Accountability)の問題、さらに社会的性差(Gender)や民族的多様性(Ethnicity)の問題についても分析概念に加える必要があることが明らかになった。こうした点に配慮して、シカゴ大学(私立)に加えて、州立大学の事例としてカリフォルニア大学についても検討することとした。
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