研究課題
基盤研究(C)
本研究は、アメリカ高等教育における教員の身分・地位・役割の変遷にかかわる歴史的実態と背景構造を、その根幹をなす「テニュア」(Academic Tenure)制度の確立過程を軸として解明することをめざした。アメリカ大学・高等教育史において、教員のテニュア制度は、知的専門職としての教員の身分・在職保障のためのしくみとして、20世紀の前半に確立された。それには、1915年のAmerican Association of University Professors (AAUP)の設立が大きな影響を与えた。さらに1940年、AAUPとAmerican Association of Collegesとの協定の際に出された「アカデミック・フリーダムとテニュアに関する声明」は、テニュアの定義と意義を確立するのに大きく貢献した。そのため従来の通説では、テニュア制度は、アカデミック・フリーダムの擁護、特に自由な研究活動に対する不当な干渉を防ぐための身分保障制度として確立した、というのが第一義的要因とされてきた。これに対して、本研究は、テニュア制度の確立は、19世紀後半から各アメリカ高等教育機関において本格化する教員の職階制度とそれに基づく教員組織「デパートメント」の形成、さらにそのデパートメントを基盤として教員が知的専門職としての地位を確立しながら、組織的自律化を果たし、やがて高等教育機関の管理運営の主導権を握ってゆく過程、-これらを総称して「専門学科主義」(Departmentalism)の傾向と称する-と密接に関連していることを明らかにした。專門学科主義は、もちろん大学教員の研究活動の専門分化傾向に伴うものであるが、それだけではない。アメリカの大学に研究機能が本格的に導入される以前から、カリキュラムの多様化や専門分化、選択制度の導入に伴って進行した現象でもある。したがってテニュア制度の確立は、アメリカの大学における「教育」機能の強化に伴って、大学教員が教育専門職としての地位を高めたことと密接に関係することが判明した。
すべて 2000 1999 1998
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)
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