研究概要 |
われわれ沖縄研究グループは、これまでアメリカ占領下の旧琉球政府時代および復帰後の沖縄県社会教育行政の歴史的展開過程については、ほぼその全貌を明らかにしてきている。本研究の主要目的は、さらに琉球諸島独自の地域的文化的基盤を有する地域・自治体の多様な「地域史」を可能なかぎり実証的に調査し、より重層的にその歴史展開と独自な特徴を解明しようというものである。なお多くの課題を残しているが、以下の諸点において新しい知見を得ることが出来たと考えている。実証的な調査を行った地域は、名護市(辺野古、屋部、源河等)、金武町(並里区)、読谷村(楚辺、大添等)、那覇市(石嶺地区)、与那国町(祖納、久部良、比川)、の各自治体および集落である。 1,戦後沖縄における社会教育の普及・定着過程は、自治体によってきわめて多様であるが、さらに集落(区、字)の組織と自治・共同の実態によって大きな差異を有する。この点は、日本の他の地域にみられない沖縄型ともいうべき特徴である。 2,特に集落(字、区、自治)公民館の社会教育機能とともに、集落の共同組織・祭祀・自治・文化等の活動に内包される人間形成的機能について多くの事実を収集し得た。 3,最近とくに注目される沖縄独自の地域史・字誌づくりの運動は、フランスやカナダ等の生活史研究の動向と比較しても貴重な成果を含み、その実践的方法を探求し提示した。 4,アメリカ占領文書(USCAR資料)の公開を活用して、そこに記録されている社会教育・社会運動・文化活動等に関する諸史料を吟味し、未見の事実発掘に挑戦してきた。 5,とくに名護市屋我地区における個性的な図書館・博物館の構想づくり。 3年間の継続研究の成果は、毎年次の報告集にまとめてきたが、あわせて東京・沖縄・東アジア社会教育研究会(TOAFAEC)編『東アジア社会教育研究』に収録してきている。
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