研究概要 |
日本の私学は、その収入のかなりの部分を家計に依存し、アメリカの私学と比べて、資産運用収入が極端に低いとしばしば指摘されてきた。その理由として2つの見方がある。一つは運用するにたる資産が、日本の私学にはないという考え方である。もう一つは、資産そのものはあるが、私学はその運用の仕方、果実の取り方を知らないという考え方である。どちらが正しいのかを実証的に検討するのが、今年度の課題であり、結果は以下の通りである。 大学法人の純資産額を合計すると、1989年約8兆円、1997年14兆円と順調に増加している。しかし資産運用収入のほうは、1989年から91年までは増加し、2200億円に達していた。しかしその後減少傾向を続け、1996年の790億円にまでなっている。これは運用利率の低下を意味する。純資産と資産運用収入から大学法人全体の運用利率を算出することができる。資産運用収入は、1996年度法人部門で290億円、大学部門で505億円、合計795億円である。大学法人の純資産は、13.5兆円であり、計算上は0.589%の利率で資産運用していることになる。 大学法人によっては、資産運用を積極的に進め、最高で3.3%の運用利率を得ているところもある。もし純資産の13.5兆円を3.3%で運用すれば、4457億円の運用収入が見込まれ、これは現行水準の5.6倍となる。そしてこの額は、国庫補助金(3,000億円)の1.5倍になる。これらのラフな形での計算結果を考慮すると、明らかに日本の私学は、資産運用の点で、経営努力が不足しているといえる。資産が少ないというより、果実の取り方を知らないという指摘は正しい。
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