本年度は連合王国(英国)における私立学校(独立学校:Independent School)の概要を明らかにすることに主眼がおかれた。その理由として、第一に、英国では公立学校制度が成立するはるか以前から、私立学校(独立学校)が各種の教育を提供してきたこと、第二に、現在においても、高い社会的評価を得ており、とくに近年のように公立学校に経営権を大幅に委譲して学校独自の経営を行わせる政策がとられ始め、また一般の公立学校を国の直轄校として運営するという方策が採用されてから、私立学校にたいする関心が従来よりも高まってきたことあげることができる。にもかかわらず、これまで英国の学校制度を研究したもののなかには、英国全体の私学(独立学校)の数、規模などの設置状況の全体を示したものが全くないことをかんがみ、とりあえず連合王国全体の私立学校(独立学校)の実勢を把握することにつとめた。その際、学校の所在州(カウンティ)、就学年と就業年数、男女別、宗派別、通学制・寄宿舎別、授業料額(寮費額)、16歳段階での全国試験の結果別に集計を行った。その結果、連合王国には2300余の私立学校があり、学校数では全体の約9.2%、児童生徒数では全体の約7.2%を占めていることが明らかになった。そのうち、30%が英国国教会の傘下にあり、その他特定の宗派には関係しないものが52%となっている。これらのデータは、いずれも次年度に行う予定の私立学校の管理・経営状況の理解のための基礎資料となるものである。また次年度は、米国の私立学校の自主性と公共性についても資料の検討を行い、最終的に英米の私立学校の果たす役割について所見を得る予定にしている。
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