研究概要 |
本研究は,日本が産業国家として成長する過程において,女性の果たした役割を産業教育史と関連づけて実証的に研究することを目的とし,(1)思想史的研究,(2)制度史的研究,(3)実態史的研究という3本の柱で作業を進めた。 本格的な歴史研究としての水準に到達するため,文献資料の収集とその考証に力を注ぎ,主として国立公文書館および国立国会図書館における調査に従事した。 まず(1)の思想史的研究については,女性の教育家,婦人運動家,女性の学校経営者の産業教育思想を明らかにするため,それぞれの代表的人物を選び出し,著作物や論説などを調査した。そのうち婦人運動家については,羽仁もと子,平塚らいてう,山川菊栄の3人につき「婦人運動家の職業教育論」と題する論文を発表した。 (2)の制度史的研究については,西洋の教育情報の受容に注目して,日本における女子の産業教育政策の展開を比較教育史的に明らかにするため,論文「文部省による西洋の女子職業教育状況の把握状況」と題する論文を発表した。 (3)の実態史的研究については,国立公文書館に所蔵される学校関係簿書(学校台帳,設置・認可の許認可文書,学則・規則の許認可文書)を調査し分析を進めている。農・工・商の各分野における女子校や男女共学(併置)校などの実態と,その中の代表校の事例調査をなしているが,何しろぼう大な量の簿書となるため,次年度まで継続することが必要である。
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