本年度の研究計画に従って、箕作玩甫関係資料の収集を第1課題にしつつ、その他の洋学者の関係資料の収集も進めてきた。こうした作業の中で得られた知見をもとに、次のような論文をまとめつつある。 1. 箕作玩甫のロシアの教育事情に関する認識 「箕作玩甫は、ロシアを英仏独等の西ヨーロッパ諸国に遅れつつも近代化を進めている国家としてとらえ、その中に日本のとるべき方策を探ろうとしていた」と考えられる。この仮説を裏付ける資料を豊富にしながら、玩甫のロシア学校教育情報を分析し、現在「箕作玩甫のロシア教育情報受容の特質(仮題)」としてまとめている。 2. 幕末期におけるアメリカ合衆国の教育情報受容-小関高彦訳『新訳合衆国小誌』-小関高彦『新訳合衆国小誌』はペリー来航に端を発して起こったアメリカ研究のひとつである。類書も併せて調査分析した上で、「幕末期アメリカ合衆国教育情報の分析(仮題)」としてまとめている。 3. 「ゼオガラヒー」の西洋教育情報-青地林宗訳述『輿地誌略』- 青地林宗訳述『輿地誌略』の原書は、当時「ゼオガラヒー」と呼ばれて識者の間で盛んに用いられた世界地理書である。これには17世紀末から18世紀初頭の西洋教育情報が含まれており、識者共通の西洋教育情報となっていた。したがって、江戸時代における「ゼオガラヒー」研究を分析すると、化政期までめ西洋教育情報受容の水準が鮮明になってくる。そのうち『輿地誌略』が最も優れたものであるので、これを分析して「青地林宗訳述『輿地誌略』の西洋教育情報」という題目でまとめた。 上記以外にも、洋学者たちの西洋教育についての情報源となった蘭書の分析を進めている。
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