研究概要 |
本年度は、つぎの点に研究目的をしぼって研究を進め、以下のような知見を得ることができた。 (1)草創期の蘭学者であった山村才助(昌永)の著述を分析することによって、蘭学草創期の西洋教育情報の特質を解明する。 山村才助の主著である『訂正増訳采覧異言』および『大西要録』、『地学初問坤輿約説』に含まれている、西洋教育情報をすべて抽出して分析した。そのとき、『訂正増訳采覧異言』の西洋教育情報を、その典拠となった『万国伝信紀事』すなわち、Hubner,J.,De nieuwe,vermeerde en verbeterde kouranten-tolk,of zakelyk,historischen staatkundig woorderden,Leyden,1748.の教育情報と逐一対照して分析した。そして、その結果を「山村才助の西洋教育情報」として論文にまとめた。 この論文において、山村才助が17世紀後半の西洋教育情報とくに大学情報を詳しく伝えており、化政期の西洋教育情報の基準を示したことを明らかにした。また、『大西要録』の典拠である「レグネル・エン・ヨシュエ・オッテンスの『万国全図』」の特定作業を続けている。近々報告できるであろう。 (2)ロシア・およびアメリカに関する教育情報受容過程の分析をおこなう。 ロシアについては「19世紀前期における後発国としてのロシアの教育情報」という視点で分析を進めてきた。その結果、かなり事例を集めることができたので、できるだけ早い時期に論文にまとめるつもりである。 また、アメリカについては、新興国アメリカ合衆国の発展と教育の関係を、蘭学者がどこまで認識していたかという視点から分析をすすめている。
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