現在の学校教育環境整備は、臨教審で提言された基礎基本の徹底、個性の伸長という教育改革の基本方針のもと、教育方法の多様化への対応を中心に展開されている。しかし、少子時代を迎え、学校教育のスリム化、学校と地域の連携・協力が大きな課題とされる現状では、学校教育環境の整備が教育現場や従来の学校教育を支える諸体制とミスマッチを生じている場面も見受けられ、実効のある整備の方向を検討する必要がある。 本研究は、臨教審以降の学校教育環境整備の動向を、学校施設を分析対象として明らかにし、学校教育環境整備を図るにふさわしい柔軟な学校管理運営、教育行財政システムの検討を行うことを目的とする。 本年度は、以下のような分析ならびに調査研究を行った。 (1) 最近の余裕普通教室の発生状況と活用の実態分析 平成9年調査のデータに基づき、全国の市町村教育委員会(人口3万人以上)における、学校施設の量的整備の副産物ともいうべき余裕普通教室の実態を明らかにした。 (2) 学校施設の質的整備をめぐる課題分析 平成9年調査データを含めた3時点10年間のアンケート調査結果について時系列分析を行った。これより、臨教審で議論された事項が10年間を経てようやく広く実行に移されつつあることが、理解された。他方で、質的整備に対しては教育環境の在り方ともからみ、関係者において全面的に支持されてはいないことが分かった。 (3) 先導校への訪問調査 学校教育環境面においてすぐれた整備が行われている学校(小学校オープンスペース校、中学校オープンスペース校、中学校教科教室型校舎校、新改築された総合学科高校など)10数校の施設見学および学校運営に関する聞取調査を実施した。
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