本報告書は、わが国の生徒減少期における学校施設整備の現状と課題を分析した第I部と、教科教室型校舎の利用実態を分析した第II部からなる。 わが国の教育政策は、臨時教育審議会答申を転換点として大きく変化してきた。小学校や中学校の学校施設の整備も同様に大きく変化してきた。従来の学校施設の量的整備から、質的整備への転換といい表すことができる。第I部は、市町村教育委員会学校施設主管課への3回にわたるアンケート調査により、余裕教室の発生と余裕教室の活用、学校施設整備計画の策定状況、整備のための課題等を検討した。調査からは、オープン形式の教室を持つ小学校の割合は、約7パーセントにのぼることが明らかとなった。 第II部は、1999年に新設されたA市立G中学校を対象とした事例分析である。この中学校は、毎時間生徒が教室を移動しながら授業を受ける教科教室制を前提とした設計がなされている。この種の中学校は全国的にもきわめて珍しく、また、今日の教育改革を実現するモデル校として全国的に注目されている。学校建築としての特色には、普通教室を持たず各教科別の教科教室が配置されていること、校舎の中央に吹き抜けを持つ広いオープンスペースがあること、メディアセンターと呼ばれる開放型のコンピュータ教室があること、オープンスペースは学校図書館を兼用していること、などがあげられる。調査結果からは、次のような学校施設整備および学校運営上の貴重な知見を得た。(1)この校舎は生徒からも教師からも評価されていること、(2)生徒は教科教室制についても肯定的に受け止めていること、(3)教室の充実が授業の充実につながったこと、などである。
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