開発途上国向けの国際的教育援助の分野において世界銀行の実績と影響力はきわめて大きくなっている。世銀は教育開発のための資金援助において単独で世界最大の資金供給源となっているだけでなく、開発途上国の教育政策担当者にたいする政策アドバイザー、コンサルタントとしても影響力を大きくしている。 本研究は、主にラテンアメリカ地域を中心に、世界銀行の支援する教育プロジェクトの具体的事例を分析することを目的とする。本年度の研究活動から次のような点が明らかとなった。 1. 1991年〜1998年の8年間に、ラテンアメリカ・カリブ海地域の26か国で全部で54件の教育援助プロジェクトが承認され実施されている。教育領域別にみると、90年代にはいって基礎教育(初等教育)の拡充を優先するプロジェクト案件が増加する傾向がみられる。 2. 現在、メキシコ、ホンジュラス、ペルー、ボリビアの四か国で実施中の初等教育改革プロジェクトには、次のような共通の特色が見られる。 (1)プロジェクトの期間は5年間が標準。(2)プロジェクトの資金調達には借入国側も一定の自己資金を用意。他の゙国際的金融機関や各国政府との協調融資の場合もあり。(3)教育の量的拡張よりも教育の質の向上に重点をおき、学習環境の整備を重視。(4)初等教育全体をサブセクターとしてとらえ統合的なアプローチを志向。(5)教科書・教材の大量作成と配布、学級文庫を設置するための図書パッケージの支給、教員・校長のための現職教育の機会の拡大、教員への指導助言体制の整備、児童の学習成績をモニターするための体系的な教育評価システムの導入などが共通の重点施策。(6)社会的公正という観点から特に不利な条件に置かれているグループ(貧しい農民、インディオ系住民、女性なと)の教育条件を改善するために特別措置。
|