今年度は、アメリカにおける大学の一般教育カリキュラム構造を日本との比較で明らかにすること、そこにおける問題点を把握することを目的として研究をおこなった。 そこでの知見は以下の通りである。1)アメリカの学士課程カリキュラムは、一般教育、専攻、自由選択からなるが、そのうち一般教育が、リベラル・アーツの伝統を引く部分であり、その歴史の長さからも大学教育の中核をなすべき部分だと見なされている。2)その一般教育を支える理念は、幅広さと一貫性であり、さまざまな学問分野を幅広く、しかも系統だって学習することを目的としているが、その2つの理念を矛盾なく現実のカリキュラムに反映することは容易ではない。実際には、さまざまな科目を提供することで幅広さを確保しようとすれば、そので系統だった学習を行うことは困難にあり、逆に、カリキュラムの一貫性を高めようとすれば、選択の幅は決められるという結果となる。それにもかかわらず、大学のカリキュラム改革の多くは、一般教育において両立させがたい2つの理念を実現をめざしておこなわれてきた。3)一般教育は、大学教育の開始の段階におかれており、新入生ををの主たる対象とする。その場合、一般教育において、大学入学者の学力と大学教育の要求水準とのギャップをうめるためのリメディアル教育ないしそれに相当する教育がおかれる場合が少なくない。そうしてリメディアル教育の増大によって、一般教育は、カリキュラム編成上、予算上の圧迫をうけるという問題にも直面している。 これらの知見は、日本高等教育学会、日本教育社会学会、大学教育学会において発表し、それに基づき3本の論文を執筆した。
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