本研究は、日本大学における一般教育の構造を、アメリカのそれとの比較で明らかにすることを目的としており、そこでの知見を要約すれば以下の通りである。 (1)アメリカの学士課程カリキュラムは一般教育、専攻、自由選択の3つの部分から構成され、そのうち一般教育がリベラル・エデュケーションの伝統を引くもっとも中核的な部分と見なされている。歴史的には、専攻が最も遅れてやってきた部分であるが、現在では最も有意な地位にある。(2)一般教育を支える理念は幅広さと一貫性であるが、その2つの理念が両立する事は、配分必修制という科目選択の構造、同じ学問分野の教員組織であるデパートメント制をとる大学の組織構造の点から困難である。しかし、この理念の両立を巡って、アメリカのカリキュラムは改革されてきた。(3)一般教育は、大学教育の開始段階におかれているため、正規の大学教育ではないリメディアル教育によって一部が代替されるという問題を抱えており、近年その傾向は増大している。(4)リベラル・エデュケーションの伝統は、他方では、ハイ・カルチャーとの関連で、近年のマルチカルチュラリズムの中で文化論の標的とされている。(5)学士号であるBAとBSとはその成立の歴史的経緯を異にするが、現在でも、たとえばコンピュータ・サイエンスの学士号をBAとBSとして異なるカレッジで発行していることにみられるように、リベラル・エデュケーションとは、BSではないという一線が画されている。 これらにもとづき、玉川大学出版社より翻訳書を出版するとともに、4本の論文を執筆した。
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