研究概要 |
本研究は平成10年度から平成12年度の3年にわたって、沖縄の非糸満系漁民の漁民社会においてその民俗形成や民俗変化に女性、とりわけ漁民の妻がどのようにかかわってきたのかを検討することを目的として実施してきた。これを検討するにあたり、宮古島に近い伊良部島の非糸満系漁民社会である伊良部村佐良浜地区ならびに八重山諸島の中核にある石垣島の石垣市大浜地区の2ヶ所を調査地として設定し、ここでの漁撈活動の実態や、漁民家族の態様を調査を通して検討してきた。宮古の佐良浜地区は主漁従農型の地区であるのに対し、石垣の大浜地区は主農従漁型の地区であり、両者の漁業への依存度には大きな差が存在したが.漁民社会における女性の役割については、糸満漁民社会ほどではないものの漁民社会特有と考えられる女性の社会的-経済的参加度は顕著にうかがうことができた。 とりわけ調査においては、以下の項目を留意しつつ検討してきた。 1.漁撈活動の実態と変遷2.漁家経済の実態3.漁民の妻の経済的役割、4.漁民の妻の社会的参加5.漁民の信仰-俗信に与える女性の影響などである。その結果、両地区共に、漁垣を中心とした漁撈に女性が積極的にかかわり、また漁獲物の販売については行商や市場(マチグロー)において、女性、とりわけ漁民の妻がこれを独占的にになってきたことが確認され、基本的には夫(男性)は海上での漁獲活動,妻(女性)は陸上での販売活動の男女分労の形態により漁家の経済が運営、維持されてきており、妻の経済的才覚がこれに与える影響は大きく、このことが女性の社会的参加への増大にも影響を与えていることが確認された。一般に"海は男の世界"という認織があるが、信仰俗信的世界においても夫に対する妻の精神的影響力は顕著であり、これも漁民社会における女性の経済的優位性が大きく関係しているとの結論に達した。
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