研究課題/領域番号 |
10610303
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
佐野 敏行 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授 (20196299)
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研究分担者 |
佐野 眞理子 広島大学, 総合科学部, 助教授 (80206002)
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キーワード | アメリカ文化社会 / 人口動態 / 移民 / 高齢化 / 自立と扶養 / エスニシティ / 小都市研究 / 文化人類学と民族誌 |
研究概要 |
本研究は、高齢者の意義ある老後の形成の仕方と、その背後にある文化的体系の理解を目指した文化人類学的研究の一部である。具体的に、アメリカのハートランドと呼ばれる中西部に点在する小都市の一つと、その周辺農場地帯において、公的な高齢者向けのサーヴィスや財政支援政策が整備される以前の1850年から1910年にかけて、どのように高齢者の扶養と自立が達成されようとしたのか、を歴史的変化と、エスニシティによる影響、ジェンダー関係の関与の仕方を考慮しながら解明を試みる。本年度での研究目標は、当該目的にあった分析を可能にする資料の整理であった。当該地域にかかわるセンサス原簿の情報は全て前回の科研費による研究でデータベース化され、個人を単位とした分析は可能となった。しかし、家族(あるいは世帯)を単位とした分析には不適切である。そこで、本年度では家族単位のデータベース構築を目指した。今回構築したデータベースから家族数の変化を追うと、当該小都市で、1850年に74世帯、10年後には325家族に急増し、その20年後の1880年に3倍弱の881家族、さらにその30年後の1910年に1955家族になった。それぞれに家族の情報として、家族数、家長の年齢、性別、職業、エスニシティ、高齢者の有無、家長と高齢者との関係などを含めた。また、周辺地域として取り上げた2つの地区では、最初の資料が得られる1860年にそれぞれ114家族、87家族、1910年に456家族、361家族であった。当該小都市と対照的な緩やかな家族数の増加は、農場の緩やかな細分化と、農場地帯の中の小さな町での人口増加によると考えられる。当初予定していたセンサス資料における家族と歴史的地図との対応作業は未完であるが、ある程度の家族が数年間の内に移動し、1900年1910年頃から数世代にわたって定住している家族が増加する傾向にあることが明らかで、移動・定住と扶養との関係について考察を加える必要があることがわかった。
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