アメリカ合衆国南部における植物治療とハーブ・ガーデンの伝統と変容を、現チェコ共和国からペンシルヴェニア州を経由してノースカロライナ州に入植したモラヴィアン教徒の生活実践を中心的資料として検討した。その際、アメリカ南部の治療伝統や広く食文化との関連を視野におさめ考察した。方法として、初期共同体村を建設するにあたって、とくに医療や衛生を重視したモラヴィアンの各種の記録を分析し、研究者およびモラヴィアン教徒集住地域においてレビューを受けた。 ヨーロッパから移入された新しい習慣や病気への対処、そして地域特有の病気や生活環境への対応において、アフリカン・アメリカンの治療の知恵、アメリカ先住民の治療伝統、そしてヨーロッパからの情報が、植物や食物に関する情報交換を通して、アメリカ南部ノースカロライナの地で影響を与えあい実践されていたことが明らかとなった。 とはいえ、ノースカロライナで溶融した文化はまったく異なっていたとはいえず、例えば病気治しの呪術においてそれぞれが類似した要素を有していたことが、資料分析の結果見いだされた。 モラヴィアン教徒は、ノースカロライナの地で現地のハーブや食文化を適用したが、故国における景観をハーブ・ガーデンのデザインに表現することも試みられていた。 以上の成果をふまえ、今後、現在増加しつつある中南米からの移民が望む治療とアメリカ合衆国の近代的医療の相克を検討し、治療文化に関しさらに知見を深めたい。
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