本年度は、次の三点について調査、研究を推進した。第一は人類学者がフィールドワークを通して対象化し記述する〈フィールド〉と人類学という制度との関係についての考察を行い、今後の研究の方向性を明確にした。第二にアレックス・ヘイリー原作の『ルーツ』という日本でも話題になった作品を原作、ビデオともに詳細に検討し日本及び諸外国でどのように『ルーツ』が消費されたのかに関する文献等資料の収集を開始し現在も継続中である。第三はアフリカを対象として書かれた人類学的な民族誌を年代順に整理し、記述のスタイルの変化を中心に研究を行った。第一と第三点に関連した論文を一本書き、今後の作業の目標を明確にすることができた。尚、論文は1999年3月に発行される。特に人類学者が対象とする社会の言語習得に関する問題と文化を記述する行為とを同時に考えていかねばならないことが明らかとなった。また、1997年に行ったタンザニア、ザンジバルでの調査に関する民族誌を旅行記に特徴的に見られる観察者、記述者の時間と場所を明記する手法を取り入れて現在作成中である。特に記述者が自らの行動や思考を客観化する記述と、記述者が他者の行動や思考を客観化する記述との違いを明確にすることを目的としている。 また、来年度以降日本においてフィールドワークを行う場所の検討も兼ねて3月には沖縄におけるアフリカ系黒人に関する予備的な調査旅行を行った。 収集した資料に関しては、科研費で購入したコンピュータを使用してサーバーを独自に構築し、データの公表にむけてデータベースをweb上で公開することが技術的にはできることを確認した。データ入力もアルバイト等を動員して着実に行っている。
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